当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。 介護

暴力しない・させない介護のために。「落ち着かせる」以外の選択肢

【運営者】吉永龍幸

ケアマネジャー(介護支援専門員)です。 地域包括支援センターという、高齢者福祉の相談所でも働いていました。 今まで数多くの高齢者やその家族とお会いした経験をもとに、このブログを運営しています。 このブログは、私一人で運営している個人ブログです。自由で自立していることが、個人ブログの良い点です。 お問い合わせは tenkakasei☆gmail.com(☆を@に変更してください)にメールをお願いします。 個別の介護や生活の相談などには応じられないのでご了承ください。

暴力行為をすることがある認知症の方を介護されている方向けに、個人ブロガーとして私なりの意見を書きます。

今回の記事では病気について多く記述しますが、私は医者ではありません。ケアマネ個人ブロガーの一意見として読んでいただけたら嬉しいです。ただ、今回の記事は、東京女子医科大学名誉教授の岩田誠先生の本から多く引用して作成しています。

「暴力行為をする方には、服薬調整をしている」という話しを聞くことがあります。医師に話して薬を処方してもらい「落ち着かせる」のです。

介護は綺麗事ではないので、服薬調整を否定しません。ただ、それ以外の選択肢を探る立場から、今回の記事を書こうと思います。

臨床医が語る 認知症とともに生きるということ(岩田) 89頁

私の知っているある人が認知症のお父さんをやむなく郷里の施設にいれたら、抵抗が激しくて、とよく相談されていたのですが、入所して2ヶ月ほどで亡くなりました。何で亡くなったかわからないというのですが、たぶん、施設では薬で動けないようにしていたのでしょう。

本人にとっても、家族にとっても、職員にとっても後悔をしないケアの方法を今回の記事で探りたいと思います。

まず、離れる。

本人も介護者も守るために、まず離れることです。

怪我をすることを防ぐため。また、感情的になって、暴力に暴力で対抗し、悲しい結末になることを防ぐためです。

母さんごめん。50代独身男の介護奮闘記(松浦)205頁

私を迎えたのは、またも台所に散らかった冷凍食品と、母の「お腹が減って、お腹が減って」という訴えだった。気がつくと私は、母の頬を平手打ちしていた。母はひるまなかった。

「お母さんを殴るなんて、あんたなんてことをするの」と両手の拳を握り、打ちかかってきた。弱った母の拳など痛くもなんともない。

が、一度吹き出した暴力への衝動を、私は止めることができなかった。拳をかいくぐり、また母の頬を打つ。

この場合、手を出したのは家族のほうからです。どちらかが手を出してしまった場合、冷静になることは難しいでしょう。

恐ろしいのは、認知症の場合、殴られたことを記憶できない場合があることです。

殴られても、殴られても、記憶できない。介護者の側から見たら、殴っても殴っても記憶されない。

暴力が常習化し、虐待につながってしまう。

 

なので離れることです。このケースの場合、その後すぐにショートステイにつなげました。物理的に距離を置くことで、冷静さを取り戻しました。

本人も家族も守るために。

行動の目的を理解し、暴力の前段階で防ぐ。

臨床医が語る 認知症とともに生きるということ(岩田) 110頁

人間は、怒るときは必ず何かの理由があります。そういうことは認知症があっても同じで、理由がなくて怒ることはありません。

「徘徊」という言葉をご存知だと思います。

認知症の方が外出し、外をうろちょろする。場合によっては戻れなくなって行方不明になってしまい、家族が探すことになる。

このように認知症の方が外をうろちょろすることを「徘徊」と呼ぶことが多いです。

この徘徊という言葉はしかしながら、適切とは言えません。

「徘徊」という言葉は、「目的を持たずに」外出する場合に使われる言葉です。

そして認知症の方は、彼ら彼女らなりの目的をもって外出をしています。

例えば、夕方になって「家」に帰ろうとする。そして本当の家から出てしまう。

家族の側から見たら、本人が目的もなく外をうろちょろする「徘徊」のように見えますが、本人は本人なりの目的を持って「外出」をしています。

認知症の方の行動には、目的があるのです。

周囲が本人の目的を理解せず、止めようとすると、本人が暴力をしてしまう場合がある。

逆から言えば本人の生活習慣や、行動の目的を理解することで、対策を立てやすくなります。

認知症になっても生活習慣は残る場合があります。

夕方にどうしても「家」に帰ろうとするのであれば、もし付き合えるのであれば、ある程度外出に付き添って、その後、本当の「家」に戻る。

このように生活習慣を理解し、止めようとするのではなくケアすることで、暴力行為を防ぐことにつながります。

脳を「遊ばせない」

臨床医が語る 認知症とともに生きるということ(岩田) 104頁

いつも社会的な場をつくってあげて、楽しく参加できるように援助してあげる、それが最も大事なことで、そうしないと、脳が遊んでしまうのです。脳を遊ばせると、妄想・幻覚が吹き荒れます。

具体的には、デイサービスの利用などでしょうか。

もしも地域に認知症カフェなど、認知症当事者の方も参加できる催しがあれば、それも一つだと思います。ただその場合、送り迎えはご家族がやる必要がありますが。

デイサービスの場合、送迎を施設がしてくれます。

いずれにしても、楽しく参加できると良いと思います。

失語症が「抵抗」に見えることがある。

臨床医が語る 認知症とともに生きるということ(岩田) 34頁

失語症を発症されている方は、しばしば家庭でも施設でも気の毒な目にあいます。「何々をして」と指示されても、言葉がわからないので、内容が理解できず、なんとなくわかったことで行動しようとするので、それが介護の人が指示したことと違うと、「介護に対する抵抗」とか「介護拒否」と呼ばれてしまい、鎮静剤を使われてしまうことがあります。

個人差はありますが、脳の病気である失語症の場合、「話す、聞く、読む、書く」のすべての機能が損なわれます。

周囲とコミュニケーションを取ることが難しく、介護拒否と受け止められやすいです。周囲の方が失語症に関する知識を持っていない場合は、なおさらです。

足の骨折など、目に見える病気の場合は周囲の方も理解しやすいですが、脳の病気の場合は理解されづらい。知識を持つことで、本人も家族も救われることもあると思います。

まとめ:介護者の安心が、本人の安心につながる。

「暴力にさらされるかもしれない」と恐怖を感じていると、認知症当事者である本人にも伝わります。

お互いに緊張してしまい、本人にも介護者にとっても良くありません。

私の今回の記事が暴力に対する対策に少しでもつながって、介護者であるあなたの安心につながれば嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました。

こちらの記事も良かったらどうぞ

ミドル世代のリスキリングと転職。使える公的制度を調べてみた。

氷河期世代の方が、良い仕事につくことができず、給与もキャリアもあげることができずに苦労している、というニュース記事を読みました。 この個人ブログは、ミドル世代の方々に役立つブログになることを目指しています。ということで、ミドル世代向けに、転職やリスキリングについての記事を書きます。 狙いたいのは、成長産業 転職をするなら、人手不足の業界はねらい目です というより、人手が余っていて飽和状態の業界には、なかなか未経験のミドル世代が転職するのは難しい。 人手不足の理由によって、人手不足業界を2つに分けられるよう ...

余命わずかな家族との向き合い方ーー逃げない死、向き合う死

さて、家族の死についてです。 google などの検索エンジンの仕様上、個人ブロガーが死や病気などの記事を書いても検索上位には表示されないようになっています。 なのでこの記事を読む方もきっと少ないのでしょう。 といって、自由な個人ブロガーとして、この記事をインターネット空間に書き遺す意味もあるでしょう。なので私なりに、当事者本人やご家族向けにしっかりと書きたいと思います。 死に至る病気であることを隠さない。 隠そうと思っても隠しきれるものではありません。表情や言葉遣い、よそよそしい態度などで必ず伝わります ...

暴力しない・させない介護のために。「落ち着かせる」以外の選択肢

暴力行為をすることがある認知症の方を介護されている方向けに、個人ブロガーとして私なりの意見を書きます。 今回の記事では病気について多く記述しますが、私は医者ではありません。ケアマネ個人ブロガーの一意見として読んでいただけたら嬉しいです。ただ、今回の記事は、東京女子医科大学名誉教授の岩田誠先生の本から多く引用して作成しています。 「暴力行為をする方には、服薬調整をしている」という話しを聞くことがあります。医師に話して薬を処方してもらい「落ち着かせる」のです。 介護は綺麗事ではないので、服薬調整を否定しません ...

なぜ高齢者は避難しないのか?親を災害から守るには?

なぜ高齢者は避難しないのか?と聞かれたら、多くの人は「高齢者は膝や腰が痛いから、避難することができない」「避難中に怪我することが怖い」などの答えを答えるかもしれません。 まったくもってその通りです。が、今回の記事では「なぜ高齢者は避難できないのか」でなく、「なぜ高齢者は避難しないのか」についてを書きます。つまり、肉体的に避難できない理由でなく、心理的に、なぜ避難しないという選択を取るのかという理由を書いていきます。 読めばおわかりになると思いますが、避難しない心理は高齢者に限らず、すべての人に対して適用さ ...

介護離職をおすすめしない理由と、介護と仕事の両立方法について

親の健康状態が悪くなったり、頼れる親族がいないと、親の介護をするために仕事を辞めるべきか悩む方もいらっしゃると思います。 しかし、介護離職はおすすめしません。 今回の記事では、なぜ介護離職を勧めないのかという理由と、介護離職をしないで仕事と介護の両立をするためのアイデアを書きます。 まず、これらのアイデアを試してみて、頑張ってみて、それでもどうしても仕事との両立が難しいなら、仕事を辞める。 それからでも遅くはないのではないでしょうか? 現在親を介護されている方や、介護離職を検討されている方にこの記事を捧げ ...

デジタル地域通貨の衝撃と可能性。地域経済とコミュニティの活性化。

東京都が東京アプリを始めました。 曰く、アプリのダウンロードと本人確認で11000東京ポイントを貰えるとのこと。東京ポイントは買い物にも使うことができます。 東京だけではありません。市民アプリを運営している自治体は他にもあります。 東京の隣の埼玉県。その中のさいたま市も市民アプリ「さいたま市みんなのアプリ」を行っています。図書館の利用者カードの機能など、あらゆる行政サービスをアプリに集約させています。 アプリを運営することで、市民にとっての利便性と、行政の事務効率の両方を向上させています。 注目すべきは、 ...

ペット後見。高齢の親が最期までペットとともに生きるための選択肢

単身の高齢者が増えている現代。病気や入院、死亡のリスクがある高齢者がペットを飼うことは難しいです。 しかしながら最近、飼い主としての責任を持ちながら、単身や老々世帯の高齢者も最期までペットを飼うことができる制度ができつつあるようです。 「ペット後見」という選択肢です。 自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法 (奥田順之著)57頁 ペット後見とは、飼い主が入院や死亡によりペットを飼えなくなる事態に備え、飼育費用、飼育場所、支援者をあらかじめコーディネートしておくことで、飼えなくなった場合にも、最後まで飼育の ...

【葬儀・相続】親が亡くなる前に聞きにくいことを聞くための道具

相続や葬儀のこと、終末期になったときの医療についての意思確認など、親が亡くなる前に話し合うべきことはあります。 気が重い作業ですがそれらのことを話し合うことで、後々のトラブルや後悔を避けることができます。 といっても、気が重い。 なので今回の記事では、親と話しづらい話題を話し合いやすくするための道具を紹介します。 エンディングノートと、もしばなゲームです。 あと、この記事の後半では、相続や葬儀などについて、なぜ親が生きているうちに準備をする必要があるのか、理由を書きました。 エンディングノート エンディン ...

見えない落とし穴にハマらないために:道路陥没事故から考える対策

2025年1月28日、埼玉県八潮市の車道が急に陥没し、大穴が発生。当時トラックを運転していたドライバーが巻き込まれ、大穴の中に落ちてしまいました。 穴はその後、塞がるどころかむしろ拡大し、一ヶ月近くたった現在もトラックドライバーを救出できていません。   【埼玉県八潮市の道路陥没事故の概要】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/saitama/articles/101/019/32 そんななか、今度は千葉県で道路が陥没しました。 八潮市での道路陥没から約2週間後の2月11日、千葉 ...

【ストレスだけじゃない】親を呼び寄せる介護同居を勧めない理由

遠方で親が一人ぐらしをしている場合、様々な点で非常に心配だと思います。親を自分の家に呼び寄せて、同居をお考えの方もいらっしゃるでしょう。 あなた自身にとっても親にとっても今後の生活に大きく関わる重要な決断だと思うので、私の記事に限らず、多くの方の意見や記事を読まれて、そのうえで決断をされると良いと思います。 中には親との同居を勧める方もいらっしゃるかもしれませんが、私は、親との同居を勧めていません。その理由を今回は書きます。 同居は、自殺を引き起こすほどのストレスをうみだす。 ケアの社会学 上野千鶴子著  ...

-介護

目次