この記事を読んでいるということは、親が独居か、日中独居のときなどにヘルパーを家に入れる必要があるのでしょう。

親は認知症や年齢相応の物忘れなどで判断力が衰えているのかもしれません。そんな親の家に、よく知らない他人が入ることに不安を感じるのも無理はありません。

また、こういった不安は、ヘルパーを疑っているようなのでケアマネやヘルパー事業所にも相談しにくいかもしれません。

現場に入る介護職員のほとんどは善良な人ですが、残念ながら犯罪に手を染める人がいることも事実です。

私が昔勤めていた施設でも、入所者の金品を職員が奪って事件になったことがありました。

では、親を窃盗や盗難などの犯罪から守るにはどうすればよいか?基本的な考え方と具体策を私なりに書きます。

基本的な考え方

① ヘルパーが誘惑に陥らないですむ環境をつくる。

現金や高価な物を目につくところには置かないことはもちろん、ヘルパーに掃除などで入ってもらう部屋とそうでない部屋を、ヘルパーとの契約時にケアマネをまじえて決めておくと良いでしょう。

また、彫刻や絵画、食器などの高価な物品があり、どうしてもしまうことが難しい場合、親の許可を取ったうえで、後述の見守りカメラを設置することも一つの方法だと思います。

ケアマネやヘルパー事業所に説明をするときも、「高齢の親が急に家で倒れたときに対応をするため」と説明をすれば、カメラを設置することに対して違和感を持たれないと思います。

② ヘルパーに任せきりにするのではなく、ヘルパーと協力関係を築く。

親の生活にあまり家族が関わっていないことが伝わると、窃盗への誘惑を引き起こしやすくなってしまいます。物を盗んでも発覚しにくいので。

逆に言えば、家族が関わっていることが伝わると、犯罪を防ぎやすくなります。

といっても、親が遠方に住んでいたり、仕事や子育てで多忙なお子様も多いでしょう。

そういう場合は、後述の動画通話機器を使うことをおすすめします。親と日常的にコミュニケーションを取ることで、親とヘルパーの会話の中でも、「この前、息子(娘)にこう言われたの」など、息子や娘であるあなたの名前が頻繁にでてくるようになります。

スマートドアベルを使って、ヘルパーと直接コミュニケーションを取ることも一つです。スマートドアベルを使えば、親の家をだれかが訪問をした際、離れてくらすあなたのスマホに通知が行きます。親がドアを開けるまでの間に、直接ヘルパーと話をすることも可能です。防犯対策とは話がそれますが、現場のヘルパーが感じる、親の最近の体調の変化などを直接聞くことができるので、貴重な情報を得ることができます。

ヘルパーと直接話しをすることで、ヘルパーに対する不信感や不安を和らげることができますし、ヘルパーにも、子どもが親の生活に関わっていることが伝わるので、防犯にもつながります。

具体策

見守りカメラ

見守りカメラは、技術的には監視カメラと同等です。本来は離れて暮らす一人暮らしの親が急に倒れたり、連絡が取れなくなったりしたときに安否を確認するための用途に用いられるものですが、防犯用にも使うことができます。

ただし、親の家にカメラを入れることになるので、親の同意は必要です。また、トイレなど親のプライバシーを傷つける場所にカメラを設置するべきではないでしょう。どこにカメラを設置するか、親と話し合う必要があります。

親の見守りや、防犯の目的でカメラを入れたいことを真摯に伝えれば、親もカメラを入れることに納得をしてくださると思います。

また、カメラを設置したら、ケアマネなどに伝えるとよいでしょう。カメラの目的は、犯罪の現場をおさえることでなく、犯罪をおこさないことです。であれば、カメラを隠す必要はなく、むしろ、カメラをさらしたほうが犯罪の抑止になります。

もしも家に高価な食器や絵画があるなら、その近辺にカメラを設置することで防犯に役立てることができます。

スマートロックとスマートドアベル

スマートロックとは、スマホで鍵の開け閉めを管理できる機器のことです。両面テープで簡単につけることができるものもあるので、賃貸物件でも使えます。従来の鍵のようにスマホを使わないで、手でつまみを回転させて鍵の開け閉めをすることができるので、高齢の親でも今まで通り鍵の開け締めを行うことができます。

スマートロックを使えば、離れて暮らす子どもが、親の代わりに鍵の開け閉めを行うことができるようになるので、ヘルパーに鍵を預けなくてすむようになります。

スマートドアベルは、訪問者が親のドアホンのボタンを押したときに、遠くに住んでいるあなたにも通知する機械のことです。これも、両面テープでつけることができるものもあります。

親の代わりに離れているあなたが、訪問者と音声でやり取りすることが可能です。親が玄関のドアを開けるまでの間、玄関前に立っているヘルパーと会話をすることが可能です。

もしも親が寝ていたり玄関を開けることが難しい場合は、先程のスマートロックと組み合わせることで、あなたが親の代わりに玄関の鍵を開けることも可能です。

また、余談ですが、これは悪質な訪問販売にも有効です。悪質な業者が親の家を訪問したときに、親の代わりにあなたが応対することで、悪質な業者を追い払うことができます。

動画通話を用いて、親と日常的にコミュニケーションをとる。

たとえ同居したり近所に親が住んでいたりしなくても、Line などの動画通話機能を使って親と日常的にコミュニケーションをとることは可能です。

動画通話機能の良いところは、無理に話をしなくても良いことです。

お互いに動画通話をオンにした状態で、それぞれがそれぞれの用事を行うことも可能です。例えば、あなたが自分の家の家事をしている間、動画越しに親がテレビを見ながらコーヒーを飲んでいる様子を見ることも可能です。

子どもが忙しい日々を過ごしていても、無理することなくバーチャル同居が可能なのです。

高齢者の中には、Lineなどをうまく使えないという方もいらっしゃるかもしれません。

最近のスマートディスプレイには、echo show 5のように、前もって設定をしておくことで、親側がなにも操作をしなくても子ども側からの操作のみで動画通話を始めることができる商品もあります。ご検討ください。

スマートタグや追跡GPSを活用する。

スマートタグは貴重品や大切なものなどにつけることで、スマホで場所を探すことができる機器です。キーホルダーやカードのようなものもあり、財布の中に入れることもできます。

大切なものが見つからないときに、盗られたのではなく、家のどこかにあるのだけれどしまい場所を忘れた場合もあります。

前もってスマートタグをつけることで、家のどこにしまったか場所を調べることができます。ただ、探せる距離は2024年現在、そこまで長くありません。もしも紛失物の場所を何キロも離れた長距離にわたって探すことをご希望の場合は、小型GPSをつけることも一つです。「追跡GPS」というキーワードで検索すれば、商品を調べることができます。商品によって距離や精度に違いがありますので、前もってご確認ください。

鍵を預けるとしても、事務所保管をしてもらう。

様々な事情でヘルパーに親の家の鍵をあずけるとしても、ヘルパー個人に鍵を渡さないでください。

ヘルパー事業所で、会社として鍵を金庫保管してもらえないか相談しましょう。まず担当のケアマネに相談されると良いと思います。

もしもヘルパー事業所が鍵を預かってくれないと言った場合、他のヘルパー事業所に変えることを検討しなければいけない可能性がでてきます。

そういった場合、ケアマネによっては、鍵を預かってくれるヘルパー事業所の情報を持っている場合もあります。

親にもヘルパーに金品を贈与しないように伝える。

昔の上司で、利用者から大量の現金を渡されたという方がいらっしゃいました。

利用者からしたら、お金を渡すことで自分をよくしてほしいという気持ちがあったのでしょう。昔の上司は無理に断らず言われるままに現金を受け取り、事務所に戻ってからその利用者の息子に連絡をして、息子にそのまま現金を返したそうです。

利用者の気持ちを損なうことなく、また、犯罪に手を染めることなく、上手な対応をしたものだと当時の私は感心しました。

ヘルパーに様々な形で贈与をしようとするご高齢の方は多くいらっしゃいます。それがあまりにも高価な物の場合、トラブルに発展してしまいます。

今回の記事は和田亜希子さんの「親が心配な人の見守りテック」という本を参考にして作成しました。和田さんが運営されているサイトに、親を見守るための機器の情報が多く載っていますので、チェックするのも一つだと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。もし良かったら、この記事をSNSやLineで家族や友人とシェアして、これからのシルバーエイジを考える材料にしていただけるとうれしいです。