
新卒として社会人生活をスタートさせる方。転職や異動で新しい職場での生活をスタートされる方。
あたらしい生活をスタートさせるときに、不安はつきものです。
どうすれば新しい環境に安全に適応することができるか?
社会人の教科書として紹介されることが多い「入社一年目の教科書」など様々な本をもとにして、私なりの意見を書きます。
このページの目次
「入社一年目の教科書」を要約。新しい職場に適応する方法6つ。
まずは「入社一年目の教科書」から特に重要だと思った箇所を引用して、紹介します。
主に新卒の方向けに書かれた本ですが、社会人の基本となることが書かれてある良書です。転職や異動などで新しい生活を送る方々にとっても、心機一転、気持ちを入れ替えて頑張るために役にたつと思います。
私自身、久しぶりに読み返してみて、学びが多かったです。
以下に、著者の岩瀬先生の経歴をAmazonから引用します。
1976年埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業。大学在学中に司法試験に合格。その後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ホールディ ングスを経て、ハーバード経営大学院に留学。卒業時に、日本人では4人目となり、上位5%に入る成績最優秀称号(ベイカー・スカラー)を受ける。帰国後、 ライフネット生命保険設立に参画。現在、代表取締役副社長
この本に書かれてあることを出来ていれば、自分の人生は違っていたのに・・・
私自身の反省を踏まえて、また、私と同じ轍を読者諸君が踏まないように、先生の書を要約したいと思います。
なんのための仕事なのか、目的を意識する。
有名な話ですが、レンガを積み重ねるという仕事をするにしても「言われたからやっている」「食べるためにやっている」という人と「多くの人が悲しみを癒やすための教会を創っているんだ」という人では大きな違いがでます。
上司から依頼される仕事が、なんのための仕事なのか。その先の目的なのかを理解し、意識することで仕事の質もモチベーションも変わります。
コピー取りを頼まれるにしても、例えば年配の重役たちが多く参加する資料作成が目的だと知れば、文字が大きくうつるようにしようとするかもしれません。
ただ言われたことをやるのではなく、目的を知ることで仕事に付加価値を上乗せすることができます。
50点でも良いから、早く出す。
上司から頼まれたことに、可能な限り早く取り組み、早く提出をする。
100点満点の出来でなく、50点の出来でも良いので、出す。
それによって、早めに方向転換や修正を行うことができます。
締め切りギリギリになって、自分なりに100点だと思ったものを出したとしても、上司が求めるものと違う場合があります。
締め切りギリギリなので、修正する時間もありません。チーム全体に影響をしてしまう場合もあります。
もちろん、自分で調べられることなどはすべて行うべきです。でも、100点満点のものを時間をかけて仕上げてから上司に提出をするのではなく、50点でも良いので早く提出を行い、フィードバックをもらいながら作り上げるほうが良いのです。
また、上司もなかなか催促しにくい。「この前頼んだあれ、どうなった?」など言いにくいものです。
であれば、部下の立場である貴方の方から、言われる前にはやめに提出をする。そうすることで、上司のストレスを減らすことができます。結果、チームにとっても貴方にとってもよりよい成果を出すことにつながります。
初めて経験する仕事、なれない仕事であった場合、自分一人でやりきるのは難しいかもしれません。そうした場合には「ここまで自分でやりましたが、ここで詰まっています」という報告ないしは相談を上司にこまめにして、前に進めばよいのです。
メール(ラインなどを含む)も早く返す
仕事は、チームで動いています。一人の報連相が遅いと、他のチームメンバーに影響する場合があります。
もしも返事が遅れそうな場合は「承知しました。あらためて連絡いたします」などで構いません。まずはメールをすることで、周囲のストレスを減らすことができますし、チームとしての機能を高めることができます。
結論を先に言う。
文章が長い人や、話が長い人の気持ちは私もわかります。私もその傾向があるので。
プライベートであれば構いませんが、仕事の場ではそうはいきません。
取引先にしろ、上司にしろ、多忙を極めている場合が多々あるからです。
相手の貴重なお時間をとらないためにも、基本的には、結論を先に言う(書く)ことが必要でしょう。
「結論から申しますと」という枕詞を使うなどすると良いと思います。
文字(図)で確認する。
上司からの指示や、打ち合わせの内容を自分なりに紙にメモにして、上司に見せます。それによってお互いの理解に違いがないかを確認することができます。
メモにするのは、会話だけでのコミュニケーションだけだと認識の違いが出る可能性があるからです。
「指示内容を本当に理解しているのか?」という上司の不安を解消することにもなります。
リップルウッド時代の上司は、下っ端の僕と話をする際も、必ず事前に要点を書き出して、そのメモを見ながら話していました。経験豊富なビジネスパーソンも実践していることです。
会議の前に事前準備をして、時間を有意義にする。
一般的に、会議で結論を出すまでにはいくつかの作業フローがあります。
① 情報を共有する。
② 論点を頭出しする。
③ 論点に対する出席者の考えを醸成する。
④ 議論する。
⑤ 結論を出す。
(中略)
「基本的なことの合意形成」
「対処可能な反論をつぶす」
根回しとは、行程③と④の間に、こうした作業を入れ込む行為なのです。
会議は「決定する場」です。会議の場で話し合いも行われますが、最初から話し合うところからスタートした場合、長時間になります。
なので会議や打ち合わせの前に、可能な限りの事前準備を行います。
具体的には、会議の前に論点を前もって参加者に伝えます。例えば事前アンケートの形で参加者に伝え、アンケート結果をまとめます。その資料を会議で示すことで、会議の時間を短縮することができます。
決定までの流れがスムーズになりますし、会議の時間の短縮や質の向上が見込まれます。
「根回し」という言葉に悪印象を持たれるかもしれません。その場合「事前準備」という言葉を用いてもよいと思います。
決定を自分の都合のよいように誘導するためでなく、会議の時間を短縮することが目的なので、悪い印象を持つ必要はないと思います。
「入社一年目の教科書」は役にたたないゴミなのか?
「入社一年目の教科書」は現在もなお売れ続けているロングセラーの本ですが、中にはゴミ扱いするような批判的なコメントも寄せられています。
「宴会芸は死ぬ気でやれ」「新聞は2紙以上、紙で読め」など、たしかに現代社会にあまりそぐわない内容がある感も否めません。
著者の岩瀬先生もそういった批判を認識されているようです。
「入社一年目の教科書」が発刊されてから7年後に、あらためて「入社一年目の教科書」に対する補足や説明を別の記事で述べられています。よかったらご参照ください。
もし新しい上司が、苦手で意見が合わない人だったら?上司と上手に付き合う方法5つ。
新しい環境に飛び込むときに不安に感じることは人間関係だと思います。
特に、上司や先輩との関係性に不安を感じる方も多いでしょう。
相性が良い人たちであったら良いですが、もしも合わない人たちであった場合どうするか?
「転職をする」という選択肢もあります。転職すべき場合もあるでしょう。ただ、今回の記事では、あえて今の会社に残る、という選択肢を選ぶ方向けに、どういうふうに上司と付き合うべきかを書きます。
顧客への貢献に集中する。
人間関係に優れた才能をもつからといって、よい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や人との関係において、貢献に焦点を合わせることにより、初めてよい人間関係がもてるのである。
こちらは、経営学者のドラッカーの本からの引用です。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本でご存知の方もいらっしゃると思います。
上司の評価など、どうしても社内の人間関係を気にしてしまうこともあると思います。
しかしながら、プロとして今後仕事を行うのであれば、気にすべきは社内の人間でなく、会社の外の「顧客」です。
顧客への貢献に集中することで、上司の評価など、社内の人間関係を必要以上に気にしなくてもすむようになります。また、結果的に、上司や他の社内の方々から良い評価や信頼を得ることができます。
なぜなら会社という組織は、顧客に貢献をすることが目的だからです。
顧客に貢献をしようと真摯に仕事に取り組んでいるのであれば、それ相応の信頼関係や人間関係を社内に築くことができます。
感情的になって上司と喧嘩しない。
小人と仇讐するを休めよ。小人には自ら対頭あり。
(小人とは事を構えるな。小人には、小人にふさわしい相手がいる。)
建設的な意見を述べることと喧嘩をすることを分けて書きます。
この場合の喧嘩とは、上司を陰で貶めようとしたり、または感情的になって上司に対して攻撃的な口調で話をすることです。
これらの行動を行って、上司が「君の言う通りだ。申し訳なかった」と頭を下げて行動を改めるでしょうか?
ほとんどの場合、逆効果なのではないでしょうか?上司は行動を改めることをしないでしょうし、逆上して攻撃してくる場合もあるでしょう。
貴方の評価や信頼を失うことにもつながります。
上司の言動に怒りが湧いてきたとしても、頭に血が上ったとしても、上司と喧嘩するメリットはなにもないと言えるでしょう。
繰り返しになりますが、向き合うべきは上司ではないのです。顧客なのです。
上司や同僚の良い点を、率直に伝える。
上司との関係性に悩むことも出てくると思いますが、上司を見下してはいけません。
言葉にしなくても態度で、相手に必ず伝わるからです。そしたら仕事がやりづらくなりますし、チームのパフォーマンスを落とすことになります。
どんな人にも、良い点や見習うべき点はあります。そこを意識して、相手に率直に伝えるのです。
上司に面と向かって言葉で褒めるのは、言いづらいと思います。言い方によっては見下されていると捉えられかねません。褒めるときは、できるだけ文章で書くことが望ましいと思います。
人は、自分に好意を持ってくれる人を邪険に扱いません。しかし、相手から嫌われているという空気は必ず伝わります。どんなに気難しい上司でも、良いところを見つけて尊敬すれば、おそらく嫌われることはないでしょうし、チャンスをもらうこともできると思います。
人によっては上司を尊敬しろ、と言うかもしれませんが、私はそれは難しいと思います。
「この人を尊敬する」「この人を好きになる」と自分を操作することは、人間離れしているのではないでしょうか。
私は、「尊敬」と「尊重」を分けています。上司を尊敬することは難しいとしても、チームを取りまとめる人間、意思決定をして責任を負う人間として尊重することはできると思いますし、すべきだとも思います。
どんな人にも良い点はあります。「相手の良い点を認める」ということも「尊重」の中に含まれます。これは一つの技術です。
「媚びる媚びない」ではなく「礼儀を尽くす」
人の臣下たる者は、諫むることありてそしることなく、亡(さ)ることありて疾(にく)むことなく、頌(ほ)めて諮うことなく、諌めて驕ることなし。
(臣下たるものは、諌めることは義務だが非難はしない。国を去ることはしても憎むことはしない。美点は褒めても諂うことはしない。諌めることはしても臣下としての礼をまもって下手からやんわりと諌める。)
上司だろうとそれ以外だろうと、相手を尊重し、礼儀を尽くすのです。そのうえで、自分の責務を果たすのです。
それができていれば、上司や他の人とも良好な関係を築くことができると思います。
礼儀を尽くしていたら、ときに上司を賞賛することもあるでしょう。だからといって、それは媚びではありません。
君に事えて礼を尽くせば、人以て諂う(へつらう)となす。
(礼に則って主君に使えると、人はそれを卑屈に過ぎるという。)
孔子でさえも、上司や同僚との人間関係に悩んでいたことが伺えます。
上司に対して礼儀を尽くしていたら、周りからは「上司に媚びている」と思われたとのこと。
そんなものです。
ただ、恐らくそう(上司に媚びていると)思う人は一部でしょう。
日々誠実に、礼儀を尽くして頑張っていたら、周囲の人々もしっかり理解してくださります。
昼食をともにする。(雑談をする)
誰もが日常的に参加するインフォーマル・コミュニケーションの代表が、昼休みの雑談です。かつての昼休みスタイルは、上司と部下たちが一緒に食事に行き、応援している野球チームが勝ったとか負けたとか、いわゆる世間話をするのが一般的でした。
毎日が難しいのであれば、例えば週に1回だけから始めるのもよいでしょう。
上司が昼食を食べているときになるべく同じ空間にいるようにするだけでも良いと思います。
そこから、自然な雑談が発生するときもあるでしょうから。
古今東西、「食事」はコミュニケーションの手段に用いられてきました。
現代でも、首脳同士が会議の前後に会食を行います。
会食を行うことで、お互いの関係を構築するということは、人類共通の知恵とも言えるかもしれません。
新しい上司と意見が合わない場合にどう意見するか?意見の言い方4つ。
さて、上司から難しい案件を指示されることもあるでしょう。一見して無理に思える指示をされることもあると思います。
その場合、どうするか?現代の本から古典まで、様々な本から引用して説明します。
条件をつけて交渉する。
こちらもリスク対策は必要です。そのために条件をつけます。難しい案件ならば、「こういうことでよければできます」と答えます。もし、自身の判断で「これは危険だ」と思ったら、その条件をつりあげる、これは立派な交渉です。
上司から指示をされたときには、基本的に答えは「はい」です。
ただし、条件をつけることはできます。もしその場で条件をつけることが難しいのであれば、「少し考えさせてください」と言って持ち帰ります。
頑なになって「できません」とその場で言うのではなく、建設的な提案をすることで、上司との関係性を良くすることができます。
上司の気持ちを考えてから、意見する。
顔色を見ずして言う、これを瞽(こ)と言う。
(目が見えないとは、相手の顔色も読まないでまくしたてることだ。)
これは上司に限らずなのでしょうが、相手を尊重する気持ちを持つべきでしょう。
今話しても大丈夫そうかどうか。TPO(時と場所と状況)を見たうえで話すのです。自分本位でなく。
「今、お時間大丈夫でしょうか?」などの言葉を一言前置きすることも大事だと思います。
また、上司の立場を慮るのです。
上司がどんな方であれ、感情的になって一方的にまくしたてるのは礼儀に反します。
上司は絶えずプレッシャーにさらされています。職場の目標を達成しなくてはなりません。上から降りてくる指示の中には、上司も「おかしい」と思うものがあります。それでもやらなくてはなりません。
日々の仕事に真摯に取り組み、信頼を得てから意見をする。
信ぜられて後に諫む。いまだ信ぜられざれば、則ち以て己を謗るとなす。
(君子は十分に上司の信頼を得てから、初めて諫言する。信頼もされていないうちに諫言などをすれば、アラ探しばかりする奴だと誤解されてしまう。)
上司に意見をするのは、信頼関係を得てからだと孔子は言います。
これは逆に考えるとわかりやすいのかもしれません。
「新人たるもの、だれよりも早く会社に出社して準備すべきだ!」
というセリフを嫌で嫌で仕方ない上司から言われるのと、尊敬してやまない上司から言われるのでは受け止め方が違うのではないでしょうか?
もちろん、尊敬する上司から言われるほうが納得できるのではないでしょうか?
これは上司の立場になっても同じです。
信頼できない部下から意見されるのと、信頼できる部下から意見されるのでは、受け止め方が変わるのです。
上司から信頼を得ること。そのためにまず、ひたむきに仕事に取り組むことだと思います。
それによって、一定の信頼を得ることは可能だと私は思います。
辞表を書いて、胸ポケット(またはカバンの中)にしまう。
転職をしないで今の会社に残る方向けに記事を書くと書いておきながら何?と思われるかもしれません。
落ち着いてください。実際に辞表を提出しろ、とは言いません。私がオススメしていることは「覚悟を決める」ということです。
自分は実際に辞めることができる。他にも選択肢を持っている。今の会社や職場に依存しないでも良いと考えることで、自立した思考を持つことができます。
上司と喧嘩をする必要はありませんが、上司や職場に対して変に卑屈になったり依存的にならないようにするために、精神的に自立する必要があります。
「追い詰められた彼は、とうとうある日、スーツの胸ポケットに辞表を忍ばせた。もちろん、上司に出すつもりでだ。だが、結果的に彼は辞表を出さなかった」
「なぜですか?」
「その日初めて彼は言えたんだよ。理不尽な上司に、ノーとな。『会社を辞める』という選択肢を手にしたからだ。私が転職の思考法を勧めるのも同じ理由だ。転職の思考法を手にしたからといって、必ずしも、今の会社を辞めなくてもいい。個人の人生だ。正解はない。ただ、『辞められない』という思い込みの檻の中に閉じ込められたら、どんな人間も必ず自分に小さな嘘をつくことになる」
以上です。今回もお読みいただきありがとうございました!