おそらくこの記事を読まれているあなたは、家族に介護が必要になったことを認識し、どうすればよいか情報を集めているのかもしれません。

親が脳卒中になった。認知症が進んで買い物や通院にいけなくなった。かかりつけ医から介護保険を申請するように言われた。人それぞれの事情をお持ちだと思います。

介護は長期にわたる場合が多く、一人で行うことができるものではありません。無理に一人で抱え込んで、行き詰まり、親を殴って高齢者虐待に至った事例もあります。もしそうなったら、あなたにとっても親にとっても不幸です。

ケア(介護)はチームで行うべきなのです。そのためにまず行うべきは、仲間を集めることです。

ドラクエなどのロールプレイングゲームでも、魔法使いや僧侶など、専門的な知識や技術をもった仲間とともに冒険を行います。

介護も同様で、医者やケアマネなど、専門的な知識や技術を持った仲間とともに行うことで、より無理なく進めやすくなります。

仲間① 兄弟姉妹・親戚を仲間にする。

兄弟姉妹と書きましたが、家族構成や事情によって違いが出ると思います。場合によっては義理の兄弟姉妹が仲間になる場合もあると思いますし、叔父や叔母が仲間になる場合もあると思います。

私自身の意見は、ケア(介護)は家族だけで抱え込むべきものではなく、社会のサポートの中で行うべきものだと考えております。長男の妻(嫁)など、家族内の女性に介護が押し付けられてきた歴史があるので。

といっても、現状、家族でないと行うことができない部分も多々あります。

そのうちの一つは、お金です。親に資産や多額の定期収入(年金)がある場合は別ですが、そうでない場合、子どもたちが親の生活費や介護費用、医療費などを支えることになります。

母さん、ごめん。(松浦 著)105ページより引用

断言しよう。最良のお見舞いは「お金」である。現金を送ることに抵抗を感じるならば、商品券でもいい。最近ならばネット通販のギフト券が、「何でも買える」という点で適当かもしれない。

介護生活に突入すると、どうしても収入に影響が出る。その一方で施設の利用や介護用品の購入で支出はどんどん増える。しかも、そのような状況がいつまで続くか分からない。収入は減り、支出は増えていつまで続くかもわからない状況において、一番もらってありがたいのは、お金だ。

実際に認知症の母親の介護をされたライターの松浦晋也さんの著書から引用させていただきました。

介護にはどうしてもお金がかかります。いつかお金が足りなくなって、兄弟姉妹や親戚にお金の援助を頼むことになる日も来るかもしれません。そのときにスムーズに援助をしてもらえるように、普段から兄弟姉妹間で情報を共有し、理解してもらえているとより良いと思います。

今だとアプリのLINEで兄弟姉妹や親戚でグループラインを創ってみると良いと思います。1対1のやり取りだと重いように感じても、複数人でのやり取りだったらやりやすいと思います。

普段から親の現在の状況や介護の状況などについて、ラインで発信して共有するのです。人間不思議なもので、文字にすることで思考や気持ちが整理されます。話を聞いてもらって共感してもらえると、孤立感も薄れます。また、普段から親の状況や介護の状況を兄弟姉妹に説明し、理解してもらうことで、こちらから言わなくても、向こうのほうからお金の援助を申し出てくれるかもしれません。

ちなみに、親が一人暮らしの場合、兄弟姉妹のグループとは別に、兄弟姉妹+親のグループもつくることもおすすめします。朝の挨拶だけでも良いのでグループトークで親に挨拶を送ることで、兄弟姉妹と一緒に親の安否確認を毎日することができます。

仲間② かかりつけ医を仲間にする。

すでに信頼できるかかりつけ医が親にいる場合は、この項目を読み飛ばしていただいて構いません。

まだかかりつけ医がいない、または、かかりつけ医がいるけれどいまいち信頼ができないという方向けに書きます。

親に気になる症状が出ているのであれば、ただちに、病院の受診をすることを勧めます。

 

 

 

 

病気によっては、はやく治療をスタートしなければならない場合があるからです。

 

 

 

 

さて、ではどういうふうに良いかかりつけ医を探すか?あくまで私の場合ですが、私だったら往診や訪問診療をやっている先生を選びます。訪問診療をやっている先生は、病院に来ることができない重度の患者を診ているので、経験値が高い場合があります。また万が一親が通院することができなくなった場合でも、ひきつづき訪問診療をしてくださります。24時間対応の訪問診療をされている先生の場合、看取りをしてくださる可能性もあります。自宅での看取りが全てではありませんが、もしも親が家で最期を迎えることを希望した場合、親の希望に沿う選択肢を残しやすくなります。

また、先生の年齢が高すぎないかどうかもチェックできると良いと思います。親の寿命次第で、介護は長期にわたる場合があります。先生がご高齢の場合、親が最期を迎える前に先生が病院を閉じる場合があります。

ただ、訪問診療をしている先生を受診したけれど、いまいちという方もいらっしゃると思います。また、訪問診療をしていない先生の中にも良い先生は多くいます。そういった場合、口コミが一つの有力な情報収集手段になります。

インターネット上での口コミも有効な場合がありますが、玉石混交の感を否めません。良い口コミもありますが、不確実で偏った意見を発している口コミもあります。ネットの口コミは匿名であり、書き込んだ人の顔が見えないのが弱点です。

仲間③ 地域包括支援センターを仲間にする。

地域包括支援センター(略して包括)は基本的に中学校圏域に一つ配置されている、介護のなんでも相談所です。親がお住まいの市町村名と「地域包括支援センター」という単語をあわせて検索すると、担当の包括の連絡先が出ます。

ケアマネや医者など様々な地域の情報が包括に集まりますし、それらの情報を相談対応時に包括は提供しています。ただ、「なんでも相談所」という書き方をすると、現役の包括職員からは怒られるかもしれません。

介護について書かれてある本やサイト、市役所の窓口など様々な場面で「まずは包括に相談を」「包括は介護の何でも相談所です」と紹介されています。また、高齢者の数は増加の一方です。

その結果、本当に数多くの相談が毎日毎日包括に舞い込んでくるようになりました。

 

高齢者の数が増える一方、包括職員の数はそれに対応していません。また、給料も高くないですし、とにかく忙しいので離職する人もいます。求人を出してもすぐに充足されるわけではありません。

人手不足の中で毎日ものすごい数の相談対応をしています。また、相談対応以外にもたっっくさんの仕事をしなければいけないため、包括職員は多忙の極みを尽くしています。誤解を恐れずに言えば、包括によってはパンク状態になっています。

当然包括職員には、「相談をじっくり聞く」よりも「相談をとにかく、さばく」ように圧力が働いています。「包括に相談に行ったけれど、あまり話を聞いてもらえなかった」という方がいるなら、それは包括職員の人間性が悪いというより、そういう構造になっているのです。

包括職員は建前では「いつでも包括に相談をしてください」と口にしますが、心の奥底の本音の部分では「なるべく相談をしないでほしい」と思っている部分があります。

なので「なんでも相談所」と書くと「これ以上相談を増やさないでくれ!」と現役の包括職員からは怒られてしまうかもしれません。

と言っても、この記事を読んでいるあなたは介護をしなければいけない立場にあるのでしょう。となれば包括職員を仲間に加える必要があります。繰り返しますが地域包括支援センターには高齢者福祉に関する数多くの地域の情報が集まるからです。

ある程度長く勤務している包括職員であれば、あなたが仲間にすべき人(医者やケアマネ、家族会や民生委員など)についての情報を持っています。

それらを教えてもらう必要があります。

包括にどういうふうに相談をすればいいの?コツってある?

残念ながら2024年現在、包括の多くはメールやラインなどでの相談対応に対応していません。電話か来所での相談が主流です。

直接包括に行くのではなく、まず電話することをおすすめします。前もってこういうことを相談したいと伝えることで、包括職員も情報や資料を準備してくれる可能性があります。

あと、もし介護を必要としている親が町内会や自治会などに所属していたり、つながりがある場合は、民生委員経由で包括に相談をすることでスムーズになる場合があります。これについては、いずれ機会があったら書きます。

相談をするときのコツですが、これはもう、誠実に現在の親の状況を説明して、相談をすることに尽きると思います。

家族と一緒に相談に行くと、心強いと思います。

仲間④ 介護の先輩を仲間にする。

高齢者の数が増え、介護する人が増えるにつれ、介護者の家族会も増えてきました。

親がお住まいの自治体と「介護 家族会」「認知症カフェ」「介護者のつどい」などのキーワードをあわせて検索することで、様々な家族会の情報が表示されると思います。

また、役所にもそういった家族会の情報があります。親がお住まいの自治体の役所の窓口にお問い合わせください。

家族会は平日の昼間などにやっている場合もあり、働いている方にとっては行くことが難しいかもしれません。が、もし参加可能であれば参加されることをおすすめします。

毎回出ろとは言いません。1回参加してみて、もし続けて行きたいと思えば続けて行けばいいし、ちょっと違うなと思ったのならば、一回で終わらせれば良いと思います。

というのも、介護者の家族の気持ちは、介護者の家族にしかわからないからです。

もちろん、医者や包括支援センターの職員、ケアマネも認知症その他多くの病気についての知識を持っています。家族であるあなたよりも様々な知識を持っています。

ただ、医者から「おたくのお母さんは認知症です」と言われたときや、親に「どちらさまですか?」と言われたときの絶望感は、言われた人にしかわかりません。

家族会はあなたと一番近い立場にいて、同じ痛みを知っている人たちとお会いする機会なのです。また、家族回に参加している先輩の方々は地域の様々な情報を知っています。評判が良い医者やケアマネなどの情報をお持ちの場合もあります。

支援者(医者、包括職員、ケアマネなど)と当事者(親)、家族(あなた)の立場はそれぞれ違います。

例えば「この病院のこの医者の評判を知っていますか?」と聞いたとき、悪い評判があってもその医者との関係性を考えて、はっきりと答えない包括職員やケアマネもいます。

ケアに関わる仕事をしている支援者は、地域の中で仕事をしています。つまり地域の様々なしがらみの中で仕事をしています。

一方、家族会に参加している介護者の家族たちは、そういったしがらみとは離れています。なので、あなたにとって有益な情報を素直に教えてくれる場合があるのです。

仲間⑤ ケアマネジャー(ケアマネ)を仲間にする。

ケアマネジャーはケア(介護保険のサービス)をマネジメント(調整)する役割の相談職です。2024年現在、自己負担額はなく、無料で利用できます。

包括の職員が、担当する地域のすべての高齢者を守備範囲とするのに対して、ケアマネは契約を行った介護保険の利用者のみを担当します。なので、担当のケアマネは包括職員よりもあなたにとって身近で、相談しやすい存在になります。

ケアマネは実際にどういうサービスを導入するかを調整します。また、サービスが始まった後も定期的に親を訪問してサービスを変える必要がないか見てくれます。

親の介護にとって間違いなく重要な人物です。ケアマネによって、親の老後が変わると言っても過言ではないでしょう。

良いケアマネをなんとしてでも仲間にしたいものです。

多くの場合、ケアマネは包括の職員が紹介をしてくれますが、ご自身で探して直接依頼することも可能です。また、包括職員が紹介したケアマネが実力と経験がある場合がありますが、そうでない場合もあります。

ケアマネの選び方は、親の介護保険の認定などによっても変わり、ここでは書ききれないのでまたいずれ別の記事で書きます。

終わりに

それぞれの事情によって、仲間にする順番が違ってくると思います。

例えば、人によっては家族会に参加して介護の先輩を仲間にすることが最初に来るかもしれません。また、いきなりサービスを使う必要が出た場合は、包括にまず相談する場合もあるでしょう。

いずれにしろ、介護は一人で抱え込めるものではありません。逆に言えば、心強い仲間がいれば、親孝行をしやすくなり、親の老後やあなた自身の生活をより良くすることが可能になります。

あなたがより良い仲間を集めることを祈っております。

ここまでお読みいただきありがとうございました。よかったらこの記事を家族や友人とシェアしていただいて、これからのシルバーエイジを考えるための材料にしていただけると嬉しいです。